「ニキビ予防には適度な運動を心掛けましょう。」
よく目にする文言です。
しかし、その具体的な関係性について書かれているサイトはほとんど見かけません。
今回はそんなニキビと運動の関係を掘り下げてみたいと思います。
(参考文献は最後に記載)
運動がなぜ肌に良いのか
運動をすると体内に多くの酸素が取り込まれ血行が促進されます。
血液には多くの栄養や酸素が含まれ、血行が促進されることで体のすみずみまで行き渡るようになります。
また老廃物の排出にもつながります。
脳内物質や成長ホルモンの分泌も促すなど、心身ともに健康状態を高めてくれることで肌にとって良い環境がつくられていきます。
■汗と皮脂で肌の自浄作用をサポート
皮膚科医であるShyamalar Gunatheesan博士は皮膚について次のように言っています。

肝臓は別として、皮膚は最大の解毒剤。発汗は毒素を取り除き、気分を良くするだけでなく、肌を若返らせます。
ポイントは運動による発汗。
~発汗のメリット~
1、有害な細菌から身体を守る。
汗にはダームシジンとよばれる抗菌ペプチドが含まれています。
ダームシジンは皮膚に触れた菌類(大腸菌など)から体を守ります。
2、汗に含まれる乳酸が保湿を担う
過去の研究で健康な人の汗には多くの乳酸が含まれていることが分かっています。
乳酸は汗の中のナトリウムと反応すると、乳酸ナトリウムに変化します。
乳酸ナトリウムには高い保湿効果があるため肌の保湿に非常に役立ちます。
大阪大学皮膚科学教室・室田浩之准教授によれば、汗そのものが天然保湿因子を多く含む物質と説明する。
参照元:皮膚トラブルに「汗」は敵か、味方か【時流◆汗のエビデンス】https://www.m3.com/open/clinical/news/article/539649/
とあります。
運動によって汗をかくことで肌にとって良い環境作りになるわけです。
※汗のデトックス効果について聞いたことがある人も多いと思います。
しかしデトックス効果については諸説があり、大量の汗をかいても体内の毒素のごくわずかな量しか排泄できない、その量が身体に及ぼす影響はほとんどないという意見もあります。
■活性酸素は身体に悪い⁉
活性酸素は、その殺菌力の強さから私たちの免疫機能を維持する役割を担っています。
しかしその量が増えすぎると正常な細胞を酸化し傷つけてしまうことが知られています。
肌への影響としてはシミの原因になるものとして有名です。
運動をすると多くの酸素を取り入れるため体内で活性酸素が多く発生します。
一見活性酸素が増えることで悪影響を及ぼすのではないかと考えてしまいがちですが、そうではありません。
私たちは体内に抗酸化物質を持っており、その作用で活性酸素はきちんと除去されます。
適度な運動であれば抗酸化能力を高めることもでき身体の健康やシミの予防につながります。
ストレス解消につながる
ストレスは自律神経を乱し、不眠を引き起こしたり、肌のバリア機能を低下させます。
ストレスと肌の関係について2点見ていきましょう。
①セラミドとストレス
富士フィルムの研究では肌の角層に存在する角層細胞間を満たしているセラミドがストレスにより減少することを明らかにしました。
セラミドとは?
セラミドは細胞間脂質の50%を占める肌に欠かせない成分です。
私たちの肌の最も外側にある角層に存在する角層細胞の間を満たしているのがセラミドです。
セラミドにはいくつか種類(セラミド1~セラミド6)があり役割も様々ですが、保湿機能や外部刺激(紫外線など)や化学的な刺激から肌を守るバリア機能を主に持ちます。
最近の研究ではセラミドの濃度が上昇するとメラニン(シミの原因)の生成が抑制されることも分かっています。
このセラミドがストレスにより減少してしまうということです。
また、年齢とともにセラミドを産生する力は衰えるため、年齢を重ねると肌の水分量が減り肌が乾燥することで、しわが増えてしまいます。
②ストレスは皮脂を促す男性ホルモン(アンドロゲン)を多く分泌する
アンドロゲンの過剰分泌はニキビの原因になるため注意が必要です。
以上のことからストレス=肌の天敵と考えられます。
しかし、運動をすることでストレスを解消することができます。
※運動がストレス解消効果を持つことはハーバード大学のメディカルスクールにより明らかになっています。(運動はアドレナリンやコルチゾールなどの体のストレスホルモンのレベルを下げるなど…)

また運動により、自律神経の働きが高まることで睡眠の質が改善されやすくなる、ターンオーバーの正常化を促すなど肌にとってとても良い環境を作ることができます。
ストレスによる肌へのダメージを防ぐためにも運動を行いリフレッシュしましょう。
(紫外線対策のために夜にランニングをするのも良いでしょう。)
成長ホルモンが分泌される
成長ホルモンによって睡眠中に肌のターンオーバーは活発に行われていますが、実は運動をしているときも、成長ホルモンの分泌が促されています。
成長ホルモンの一般的な役割として、脂肪の代謝、タンパク質の合成を促進、糖質の代謝などが挙げられます。中でも肌にとって大切な働きは以下の2つです。
・タンパク質の合成を行うことで体内のコラーゲンやヒアルロン酸の生成能力を向上させる働き。
・成長ホルモンが肝臓に働きかけ肝臓からの IGF-1(成長因子)の分泌を促す働き。
成長ホルモンが肝臓からの IGF-1(insulin-like growth factors1:成長因子)の分泌を促し、その IGF-1 が肌細胞に働きかけて、美肌成分(うるおい成分やコラーゲンなど)の生成を促進します。
MENARD:https://corp.menard.co.jp/research/tech/tech_01_02.html

成長ホルモンが肌艶を改善するという研究結果もあります。これは成長ホルモンがもつ抗利尿作用により腎臓で水分の再吸収が促進され、その結果体液量が増加し肌艶が改善されたことを示すものです。
しかし、成長ホルモンは加齢とともに分泌が低下するため運動により分泌を促すと年齢を重ねても肌の老化を遅らせることができます。
特にオススメとされるのは、軽い汗をかく程度の有酸素運動です。ウォーキングやジョギング、ストレッチ、ヨガなどは体の代謝をアップさせます。
ジムでの運動はニキビの原因になりうる!?
大切なのはすぐに汗を流すことです。
シャワーを浴びることで、
・運動中に分泌された汗と皮脂を洗い流す
・ジムのマシンに触れて付着した病原菌やバクテリアを除去する
また皮膚科医のAdam Geyer博士は「体臭の原因は汗ではなく、汗の中で繁殖するバクテリアだ。」と述べており、運動後のシャワーを推奨しています。
どうしてもシャワーを浴びることのできない状況の場合は汗拭きシートで対処しましょう。
運動後の汗を乾くまで放っておくと、毛穴の中にバクテリアが残り、ニキビができる可能性を高めてしまいます。
またジムでトレーニングをしたい人はGeyer博士が以下のように述べています。
「マシンにタオルを敷いて使えば、他の人が持ち込んだバクテリアにさらされるリスクを減らすことができます。
ただマシンに敷いて使うタオルと、顔の汗を拭くタオルは分けたほうがいいでしょう」とジムに2枚のタオルを持っていき、バクテリア対策をすることを推奨しているので参考にしてみてください。
最後にジムで使用した服、タオルは必ず洗濯をして着回すことのないようにしましょう。
一度汗をかいた時点で服に菌が繁殖していますのでシャワーを浴びても意味のないことになってしまいます。
まとめ
運動には肌にとって発汗、血行の点から多くのメリットがあります
ニキビ肌に悩む人たちの中で日々運動不足だと思う方は15分程度歩くことから始めるだけでも肌にとって良い環境を作ることができます。
最初のうちはめんどくさいと思う方も多いでしょう。しかし、習慣化することで美肌作りの一端を担うと考え今日から運動をはじめてみてはいかがでしょうか。
参考文献
・美容皮膚科学 監修:日本美容皮膚科学会 南山堂
・Trends Endocrinol Metab 2011;22(5):171-178
・セラミドのチカラ http://www.supplement-video.com/20.html
・運動による酸化ストレスについて http://www.meijiu.ac.jp/about/research/unit/pdf/jusei02.pdf
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